以前の記事で、赤ちゃんの成長過程で「さ行」の発音に至る過程を見ました。
今回、それとは別に「エレベーター」を「エベレーター」と言ってしまうような場合について考えてみます。
「ベ」と「レ」が入れ替わっているものの、それぞれ発音はできています。
そのため発音できないのではなく呂律が回っていないパターンと言えそうです。
同様に、後述のサンプルの中でも「おとーさん」を「おちょーたん」と言っている例があります。
こちらの、「た(おちょーたん)」が言えるのに「と(おとーさん)」が言えていない点もまた、呂律が回っていない例として扱ってみました。
「さ行」の発音の変化は下記の記事を参照ください。
子音が入れ替わる法則の仮説
ところで、子音が入れ替わっても全体としてあまり不自然さを感じないのは入れ替わりに法則があるようです。
以下、「エレベーター」が「エベレーター」になるような変化の仮説です。
- 母音は入れ替わらない
- 入れ替わる子音に「系列」がある
そこで以下、系列があるという仮説のもと色々な音を聞いてみます。
S → CH → SH → T → Pについては、下記の記事から「同系列にみなし済」とします。
子音の系列を調べる
例①:「だいよんのおちょーたんだよ!」

大人の発音 | 子供の発音 | 仮説 |
ライオン(LA I O N) | だいよん(DA I YO N) | LとDは同系列? |
おとーさん(O TO-SA N) | おちょーたん(O CHO-TA N) | TとCHは S → CH → SH → T → P系列 |
例②:「だいよんのあーたん」

大人の発音 | 子供の発音 | 仮説 |
おかーさん(O KA-SA N) | あーたん(A–TA N) | ・Kは不明 ・SとTは S → CH → SH → T → P系列 |
例③:「ちだないでー」「だちゅだ」「たちゅた」
らくだという名前を知らず、初めて発音した「らくだ」の音が採れただけでなく
2歳にしてすでに関西弁で「えと…、知らないでー」と言っているサンプルまで採れました。笑

「だちゅだ」とも「たちゅた」とも聞こえるので両方をサンプルとしました。
大人の発音 | 子供の発音 | 仮説 |
らくだ(LA KU DA) | だちゅだ(DA CHU DA) | LとDとTは同系列? |
らくだ(LA KU DA) | たちゅた(TA CHU TA) | LとDとTは同系列? |
らくだ(LA KU DA) | だちゅだ(DA CHU DA) | KとCHは同系列? |
大人の発音 | 子供の発音 | 仮説 |
しらないでー (SHI LA NA I DE-) | ちだないでー (CHI DA NA I DE-) | S → CH → SH → T → P系列 |
しらないでー (SHI LA NA I DE-) | ちだないでー (CHI DA NA I DE-) | DとLが同系列? |
例④:「らに」

2回言っているうちの、一回目が「らに」と聞こえて興味深いです。
大人の発音 | 子供の発音 | 仮説 |
わに(WA NI) | らに(RA NI) | WとRが同系列? |
ここで今回、「ら行」ではありますが、Lではなく「R」としました。
アメリカ人の子供の例ですが「クラッシュ!」というのを「くわっしゅ!」と言っているのを聞いたことがあるからです。
Wに関係する「ら行」をR、関係しない「ら行」をLに区別することにしました。
大人の発音 | 子供の発音 | 仮説 |
crash (KU RA SHU) | cwash (KU WA SHU) | RとWは同系列? |
その他の例 (日本の子供が英単語を聞こえたままに書き留めた例)
ネット上でチラッと流れてきて、おもしろかったのでメモをしたものです。
英単語を子供に聞かせて、聞こえたとおりに書き留めてもらったリストのようですが、元の情報は失念してしまいました。
英単語 | 子供が聞き取って書いた音 |
water | わーらー |
girl | ぐおー |
cool | くーお |
pretty | ぷうぃりー |
cat | きゃあ |
really | うぃーりー |
important | いんぽーるん |
battle | ばーろー |
train | ちゅえいん |
まとめ
今回、口の中の発達が不十分で呂律が回っていないと思われる場合についてみてみました。
やはり「母音は入れ替わらない」と言えそうです。
逆に言えば、母音があっていれば全体として正しそうなリズムで伝わる。
子音については、もっとサンプルを集めたらもっと複雑、または混沌としているのかもしれませんが
今回のサンプルでは下図のように繋がりました。

R-W系列は繋がりませんでしたが、逆にここから日本人が苦手とする英語のRとLの発音について考えられそうです。
つまり「Rの発音が苦手なら、いっそ”わ行”で発音すると良さそう」ということです。
- Lは日本語の「ら行」のまま発音する
例:light(らいと) - Rはいっそ「わ行」で発音する
例:right(wぁいと)、really(wぃーりー)
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